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かっぱの待避所だよ
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かっぱのべる:あんなのおとうさんとおかあさんのおはなし
■ラプソディ聞いてたら初めて聞くのに布団に頭をつっこんでじたばたしたくなるような初心を思い出したので設定メモSSかくよ!
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港へと続いていく川を下る船を黒髪の男女が眺めていた。男の腕には生まれてから一月ほどの赤子が、彼の指を吸いながら夢と現の間をさまよっている。
「結局、彼らのほうが先に行きましたね」
女の腕には、白い弓と革の矢筒が抱かれていた。
「いくと思ってたさ。兄が渡る時、あの子はあんなに激しく罵ったのだもの。子どもが一番怒るのは、自分がやりたくてやれないことを誰かに先にやられた時さ。」
「彼が子どもなら、その子は『子どもの子ども』、ねえ・・・。彼はその子にといって、自分の作った弓矢を残していきましたけど、それよりも先に彼に残すものを忘れていますわ」
「弓職人だったからなあ。自分の子どもにも後をついで欲しかったのだろうよ。ちょっとその弓を見せてごらん。」
女が男に弓を見せると、彼は一瞥してこういった。
「自分の髪を張った弓か。よし、この子の名前は『モルタン』だ。アンナタールに弟ができたな。」
「そうですね。ついでにリンドンに戻る途中でアウレンディルも引き取りましょう。幼い娘ですのに野営地住まいは辛いでしょう」
冬の日は瞬く間に落ちる。二人は薄紫の水平線に浮かぶ黒い点になった船を見ながら、同時に同じ呟きをした。
『次に子どもを預かったら、私たちも渡ろう』
彼らも世界に倦み始めていた。しかし彼らには幼い娘がいたので、その娘が成人するまでは西には渡らずにいようとしていた。ところが昨年、男の兄夫婦が歩き始めたばかりの娘を野営地に預けたまま西に渡ってしまった。二人で森の奥を探索中に何か恐ろしい物を見たらしいということまでは聞き出せたが、支離滅裂な部分があり、今までの両親と違うと怖がる娘と離す事自体は彼らも賛成していた。まさかそのまま西まで行ってしまうとは。今回は男の弟夫婦が渡った。船での長旅に幼子の体が持たないだろう、とのことで彼らに息子を預けたのだ。ほんの数年待てば一緒に渡れるだろうと男は説得をしたが、結局渡ってしまった。
「彼もまた恐ろしいものを見たといっておりましたが、一体何を・・・」
女と男が再び水辺に顔を向けたとき、燃える日の入りに彼らも見た。かつて彼らの親が主君に従い、この地続きの港を同族の血に染めたことを。きっと男の兄や弟も森の奥で、山の上で、似たような光景を幻視してしまったのだろう。はじめに目覚めたのがこの地でも、私たちがここにいることは懸命ではない。すべてのエルダールが西に渡ることは必然なのだ。
「早めに次の子どもを預かろうなあ」
と、のんきにいう男を思わず弓ではたいた女は勢いがついてそのまま川に落ち、預かった弓矢をほっぽりだしてなんとか川辺によじ登った。二人はもう笑うしかなかった。
(とりあえずおわり)
かぱ.jpg
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